次世代に引き継ぐ、
古民家リノベーションで
新たな価値創造
日本家屋の古き良き趣を楽しむ古民家リノベーション
昔ながらの日本家屋を、風情や趣きを残しつつ現代のデザインやライフスタイルに合わせてリノベーションする。
そのメリットとデメリット、費用についてなど、知っておいた方がよいことに関してご紹介します。
古民家の魅力
古民家の魅力とは何でしょう?それは、木造建築が持つ独特の雰囲気や温もりです。伝統構法で建てられた古民家は、間取りや形式はさまざまです。例えば、儀式や祭りなどの年中行事の「ハレ」といわれる非日常空間、普段の生活である日常の「ケ」といわれる空間を持つような大きな間取りから、田の字型の間取りを持つ普通の家もあります。ですが、それらのどの家にも、土間やかまど、囲炉裏や縁側といった魅力的な場所や設えがあり、それぞれが生活することに置いて、魅力的な仕掛けとなっています。
古民家のイメージとは
古民家は「暗い・寒い・壊れそう」などというイメージ持たれている方も多いですが、そのイメージは古民家の特徴を正しく捉えていると思います。
そう聞くと驚かれるかもしれませんが、地震大国であり、高温多湿の四季を持つ日本において「暗い・寒い・壊れそう」ということこそが、昔の人たちの創意工夫の賜物だったのです。それこそが住まう人の生活を豊かにし、安全に暮らすことの出来る建築物の特徴だったのです。
「寒い」というイメージは、エアコンの無い時代に夏の暑さを如何に凌ぐかに特化して作られているところからきているのかもしれません。
「暗い」というイメージは、深く大きな庇からくるものだと思います。たしかに大きな庇は暗さを感じさせるかもしれません。しかし、それは暑い日差しを遮り、夏を快適に暮らすための仕掛けでもあるのです。
地震の際には建物も一緒に揺れて地震のエネルギーを吸収し、建物の損壊を防ぎます。もっと大きな揺れの場合には屋根の瓦を落として荷重を減らし、柱が曲がったり土壁が剥がれ落ちることで地震力を吸収することで地震に耐えていました。これが「壊れそう」だと感じさせる一つの理由かもしれませんが、このように揺れることで、さらに大きな揺れから住まう人を守ってくれていたのです。
古民家とは力強い梁や柱の持つ魅力だけでなく、高い天井や緩やかに繋がる平面空間が持つ開放性、そして繊細とも呼べるしなやかな力強さなのだと思います。
伝統構法と軸組み工法の違い
– 伝統構法・・・「柔構造」
「伝統構法」とは、太い柱と大きな梁を、仕口(しぐち)・栓(せん)・継手(つぎて)と言った伝統的な木工技術で組み上げた建物のことです。柱や梁の本数は比較的少なく、室内の間仕切りも最低限の壁と、障子や襖といった建具で緩やかに仕切られています。柱は玉石と呼ばれる石の上に載っており、屋根には重い瓦が葺かれていることが多く、室内の天井も屋根の骨組みが見えるような建物が多いようです。その構造体は「柔構造」と呼ばれています。
– 軸組み工法・・・「剛構造」
一方、「軸組み工法」の家は、細い柱と梁を多く使用し、室内の各所に壁を設け、筋交い(すじかい)と呼ばれる斜めの部材で補強することによって建物の強度を保ちます。建物はコンクリート製の基礎に固定され、柱や梁なども釘や金物で固定します。この建物を「剛構造」の建物と呼びます。現在、私たちが住んでいる多くの木造住宅は、この軸組み工法(剛構造)の建物なのです。
– 構造の違いは建物の揺れ方の違い
柔構造の古民家は、建物全体が地震と一緒に揺れることによって地震のエネルギーを吸収し、緩やかに受け流すように考えられており、剛構造の建物は、地盤と共に建物自体が揺れ、地震のエネルギーに耐えるように考えられています。柔らかく受け流す「柔構造」と、踏ん張って耐えようとする「剛構造」。この建物の構造的な考え方の違いは、リノベーションの方針にも大きく影響を与えるため、理解しておくことが大切です。
地震に対しての考え方
伝統構法の建物をリノベーションする際に、現在の建築基準法に則った補強方法にこだわってしまうと、柔構造の持つ利点を消してしまう可能性があります。
現在は建物の耐震性能を基準法に則って「耐震等級」で示しますが、柔構造の伝統構法にはその考え方は通用しないからです。もしも構造計算による安全性を確保したいと考えるならば、伝統構法に熟知した専門家による「伝統耐震診断」を受け、リノベーションの方針を立てましょう。
古民家リノベーションを成功させるために大切なこと
– 詳しい専門家に依頼する
まずは古民家に詳しい建築家探しが大切です。伝統構法で建てられた古民家の状態を正しく判断し、ポイントを抑えてリノベーション計画を提案し、耐震性能を向上させられるような設計を行うことの出来る建築家。そんな建築家と出会うことができたら、その時点ですでに計画の半分は成功したと言っても良いでしょう。
リノベーションしたい古民家を建築家に一緒に見てもらい、建物の状態の良し悪しを判断してもらいましょう。そして、そのような建築家ならきっと優秀な施工者を知っていると思います。古民家リノベーションの様々な難しさは、古民家をよく知る建築家、あるいは同じぐらい詳しい施工者との出会いが解決してくれるのではないでしょうか。
– 優先順位をよく考える
念願の古民家を手に入れてリノベーションの計画を立てるときに、まずは優先順位を考えておかなければなりません。例えば、「間取りの変更」「耐震性能の向上」「断熱性能の確保」「設備機器類の変更」「バリアフリーへの対応」などの内容になると思いますが、どの項目を優先するのかは費用的にも大きく影響するので、建築家とよく相談しましょう。
古民家を建築家と一緒に見て貰い、建物の状態の良し悪しを判断して貰いましょう。そしてそんな建築家ならば、きっと優秀な施工者を知っていることでしょう。古民家をリノベーションする様々な難しさは、古民家をよく知る建築家、あるいは同じぐらい詳しい施工者との出会いが解決してくれるといえそうです。